第五話
最終話~逆転への切り札~
俺は、潰してしまった。自らの切り札、勝ち筋を。
たった一度のミスで、俺は絶望的状況に追い込まれてしまった。まさかホリプパがバトルで敗れるとは思っていなかった、その油断が身を滅ぼしたのだ。
場には相手のユニットが2体、中央ラインに『マオ・シャム』、右ラインに『銀行頭取ロック・フューラー』、2体ともこちらの自軍エリアまできている。それに、ロック・フューラーには黒1支払いフリーズするだけで隣接しているユニットのパワーを-5000させる能力がある。しかも、自身の能力でフリーズされる度に欲望の連鎖と同じ能力を使える。考えも無しに5000以下のユニットを場に置くのは、ただ自分の首を絞めるだけの自殺行為となってしまう。しかし、俺のデッキには一部を除きほとんどのユニットが3コスト付近の軽量ユニットで構成されている。これではシャムに対抗する事だけでも難しい。
俺は、もうほとんど諦めていた。詰み、それはこういう事なのだろうと。俺に出来る事、それは手札を机に置く事だけだった。
――その時、俺は思い出した。今まで何のために闘ってきたのか、を。初めは、プロモのカードが欲しいから、ただそれだけを思いこのドラフトに参加した。そこで最後に引いてしまった『フェアエル・パーティ』。悔しさのあまり、こいつを必ず手に入れてやると決意した。そして、ここまで勝ち続けた。なのに、決勝戦でこんなにも簡単に諦めていいものだろか。そうだ、諦めるのはまだ早い。俺のデッキには、まだこの壁を越えるユニットが残されているじゃないか。
俺は息を吹き返したように、だが慎重に、ゆっくりとプランをめくった。しかし、そこにあったのは『闘神チヨダ』。一瞬、7コストというコストの重さからこれらの壁を越えられるかと思ったが、生憎こいつのパワーは5000、これではシャムと相打ちを取れるだけである。俺が求めているのはこいつではない。そう、ロック・フューラーと同じサイズ、6500を持ったユニットだ。俺のデッキには、1枚だけ入っている。ファイアストーム・ドラゴンもいるが、こいつは序盤に赤エネを確保するためエネルギーゾーンに置かれている。だから、今俺のデッキには1枚しかいない。もしかしたら、スマッシュに送られているかもしれない。はたまたデッキの下の方かもしれない。でも、俺は祈る。必ず来ると。マキリは来てくれた。だからこいつも来てくれる。
「……プランを更新します」
俺は一気にめくってやった。必ず来てくれると、信じていたから。
めくれたカード、『闘神ニシキ』。
(……来たっ! 来てくれたっ!)
迷わず、それをシャムのスクエアに置く。当然のごとくシャムは墓地に置かれ、ニシキは悠然と生き残った。ここならば、コルドロンの効果でパワーが+500され、ロック・フューラーをわずかに上回る。これで相打ちも取られず、一方的に倒せる。ようやく、俺の首の皮が繋がった。
次の相手のターン、特に目立った動きをするわけもなく、プランから『変幻獣バブル・ジュエル』を右ラインにプレイ。そしてロック・フューラーでスマッシュ。これで、俺の受けたスマッシュは5。なんらかのユニットがこちらまで攻めてくるか、2スマッシュのユニットが中央で優先権放棄するだけで、こちらは敗北となる。やっとニシキで首の皮が繋がったと思ったら、すぐこれである。やはり今回も絶望的状況を回避する事は出来ないようだ。
そして俺のターン。何か打開策を求め、ドローする。すると、ここで、俺はあるカードを引いてしまった。
“ある可能性”を秘めた、最初のデッキ構築の時、俺を呼び止めたカード。
――様々なカードが俺を横切り、そしてさっていく。そんな中、そのまま流そうとしたカードに呼び止められたような、妙な感覚が俺を過ぎり、見直した。そこには、俺が前にデッキの主体として使っていたカードがあった。この感覚は、もしやこのカードの呼び声なのか。俺はその一枚をひっそりとデッキへと忍ばせた。信じてるぞ、と念を送って――
今まさに、そのカードが来たのだった。だが、所詮は“可能性を秘めたカード”、適当に使ってはただ返り討ちにあうだけだ。俺はまず、エネルギーを見る。ここは丁度いい。次に手札を見る。手札にはこのカード以外、『大巨人マーキュリー・イーター』『弾丸小僧アルジー』『弧状の魔炎アーク』がある。材料は揃っている。そして、最後に相手のエネルギーを見る。ここが一番の難関なのだ。しかし、生憎相手のエネルギーゾーンにはリリースされたエネルギーがたくさんある。これでは、作戦を遂行する事は出来ない……。
そこで、俺はある策を考えた。相手が、うまくそれに乗ってくれれば……。
「灼熱のコルドロンをフリーズ、一回だけニシキの移動コストを0に。そして、そのままニシキをロック・フューラーのスクエアへ」
これで、ロック・ヒューラーの壁を潰す事に成功した。
「優先権放棄!」
残すは、相手の対応。
俺は必死に祈った。もしこれでエネルギーを使い切ってくれれば、“可能性”が“確実”へと変わるかもしれない。
しかし、無情にも相手はそのまま優先権をもらう。そうやすやすと、チャンスは訪れてくれないようだ。
そして相手のターン。相手は必死にスマッシュを取りに行くように、バブル・ジュエルをこちらまで進軍させる。そのスタックに、俺はバブル・ジュエルの目の前にマーキュリー・イーターを置く。これで、相打ちを取れる。そんな時だった。相手は、何やらそのスタックに『ローグ・ロングホーンビートル』を右ラインの敵軍エリアにプレイしたのだ。どうやら、テキストを見間違えたようだ。
いける……っ! これで作戦は成功する……!
俺は心の中で叫んだ。このままなら勝てる! そう思い込んで。
しかし、ここで相手は『エメラルド・ソウル』をバブル・ジュエルに使った。これで、バブル・ジュエルのパワーは6000、マーキュリー・イーターのパワーは3000、一方的に踏まれてしまう。俺はひどく恐れた。このスマッシュが通ってしまったら、俺は敗北してしまう。仕方なく、さらにスタックし、俺は左ラインの自軍エリアにアルジーをプレイ、そして廃棄した。それにより、マーキュリー・イーターのパワーは5000、だが、あと1000足りず。仕方なくそのままバトル開始、そしてマーキュリー・イーターは墓地へと送られた。効果で、俺は相手に残っている最後の1エネ、それをフリーズさせる。これで、相手は全てのエネルギーを使い果たした。これは、俺が最も望んでいた状況だった。しかし、右ラインには残りパワー1000となったバブル・ジュエルがスマッシュをするため優先権を放棄していた。このまま通せば、俺は負ける。仕方なく、手札からアークをぶつけ、何とか阻止した。
だが、ここである問題が発生してしまった……。条件の材料となるユニットを、全てバブル・ジュエルとの戦闘に使用してしまったのだ。俺の手元には“可能性を秘めたカード”、ただ一つ。
俺のスマッシュは5、相手のスマッシュは3。そして、場には効果により7500の化け物と化した相手の『ローグ・ロングホーンビートル』がいる。あのカードを迎撃できるカードなど、もう残ってはいない。要は、ここで俺が先に勝たなければ、次のターン、確実にやられる。
まさに、運命のラストターンという事だった。
しかし、俺の総エネルギーはスマッシュを含め11、この作戦はエネルギーのほとんどを消費してしまうため、プランから展開して……、という事は許されない。
そう、俺の勝敗は、この1枚のドローに託された。
もし、これが条件を満たすカードなら……。だが、逆に条件を満たすカードじゃなかったら……。
(俺は、全てをこのドローに賭ける……っ!!)
ゆっくりと、山札の上のカードに触れる。ドキン、ドキン、と鼓動が荒ぶっていくのを感じる。
もし、引けなかったら……。いや、そんな事を考えていてはいけない。マキリもニシキも、ここ一番で来てくれたじゃないか。信じる、信じるんだ。引く、必ず引く、絶対に引くと……っ!!
そして、勢いよく、俺は引いてやった。全てを、この1枚に賭けて――――
――――引いたカード『フライング・チャーム』
――――来た、来てくれた。条件を満たす、3コスト2移動以下のカード……っ!!
「3コスト払い、『フライングチャーム』を中央ラインにプレイ! そして、2コスト払い、『フライングチャーム』に『誇りある反乱者』をプレイ――――!!」
こうして、俺は全ての闘いを勝ち抜いた――――
長かった闘いに終止符が付き、俺は今カードキングダム伊勢崎を後にしている。その手元には、『魂の刃マキリ』が握られていた。もちろん、『フェアエル・パーティ』とプロモの『犬闘士ブル・マスティフ』も一緒に。そう、カードの分配時、『フェアエル・パーティ』の後にもう1順した時選んだのだ。今回の激戦を共に戦い抜いた相棒を取らずして俺の相棒は語れない、そう言うことだ。
俺は、きっと今日の闘いを一生忘れない。いや、もし忘れたとしても、この『魂の刃マキリ』、このカード見れば、あの光景が目に映る事だろう。今日の、初めてのドラフトでの激戦が――――
最近のコメント